August 2003

August 08, 2003

「nobody Eve だれでもないもののイヴ」

「nobody Eve だれでもないもののイヴ」シアタートラムでのダンス公演。笠井叡さんのコレオグラフィという珍しい作品だ。4列目の中央の席。ペトラとガルドーナがソファの前で踊り、そのあと山田せつ子と木佐貫邦子が一人づづ踊る。山田は、やはり天使館系の舞踏だ一目でわかる。木佐貫は初見だが、スポーツの体操競技のような踊り。これ自体嫌いではないが、あまりにもこれまで見てきたものと違うので、最初強い違和感を感じた。要は、意識的にこういうダンスをしているのかもしれないけれど、モダンダンスの系統なのだろう。もとにバレーのフォーマットを色濃く残しているモダンダンス。こんなにも身体に深く刻印されたいるものかと正直驚いた。山田のダンスは、暗黒舞踏ではないので、意識してみないと同じような踊りにも見えてしまうが、完全に違うことがよくわかる。手の動かし方、腰の使い方にはじまり、旋回やひねり、ジャンプや寝込んだ姿まで、似ているが大本のところがまったく異なる。「身体の行為、しぐさをちょっと見るだけで、その人の履歴がわかるわ」と羽鳥さんはおっしゃったけれど、その言葉がこれほど的確だとは驚きである。
身体と履歴、記憶の構造化という問題を考えるとていいケーススタディになった。ペトラは観客席におりてきて、なんと僕の前までやってきて僕に目配せ。スポットを浴びてしまった。ペトラは感情派の踊り。カルドーナは技巧派。二人ともうまい。あとから山田さんにうかがったら、すべて振り付けられていて、ソファを使って4人で戯れる場面があるが、あの前後の15秒だけが即興。それを聞いてふたたび驚く。即興のようにしか見えない振り付けってフォーサイスではないか。
全体の流れ、場面転換は、いかにも笠井さんらしい。音楽や装置こそ今風になったけれど、昔から変わらない。それも面白かった。ただ、もっとも印象に残ったのは、二人の舞踏家の年齢。山田さんはもう52歳。そして木佐貫さんは40代。ある程度年端を重ねてきた二人の女性の身体というものが、だんだん最後になるにしたがって前景化してきたのだ。そう見ると、ペトラの30代の身体、そしてやはり一番若かったカルドーナの20代の身体。身体とジェンダーという問題系がこういうかたちで浮上するとは思いもしなかったので、僕にはとても興味深く感じられた。木佐貫さんはけっこう頭が大きい。山田さんは、立ち姿が少年ぽい。

cauliflower at 23:23|PermalinkComments(0)TrackBack(0) ダイアリー | アート