February 2004
February 29, 2004
エルジェ『ファラオの葉巻』1987年
僕が最初に勤めた会社は、学校図書館を専門とする書店でした。そこの売れ筋商品(書籍)の一つが、タンタンシリーズだったのです。販売員である以上商品知識が必要です。学校の先生にタンタンがどんなに面白い本なのか説明しなくてはなりません。ところが、はずかしながらそれまでその存在すら知りませんでした。それで、次々と刊行されたタンタンシリーズをむさぼり読むうちに、すっかりハマってしまったのです。
タンタンシリーズは、ニッカボッカーをはいた少年記者タンタンがミルゥ(翻訳ではスノーウィ)と一緒に世界各地をかけ巡る冒険物語。タンタンが訪れる地域は、南アメリカや中国や砂漠地帯といったどちらかというと世界の周辺部にあたる場所。僕自身そういうところが大好きなので、読んでいる時はすっかりタンタンになった気分です。『ファラオの葉巻』はカイロとエジプトの砂漠が舞台。残念ながらまだ行ったことがありません。僕の手元にも突然謎のパピルスが飛んできて……、そんな夢想にふけるおやじがいてもいいですよね。ちなみに、うちの愛犬の名前はミルゥといいます。
エルジェ『ファラオの葉巻』1987年
タンタンシリーズは、ニッカボッカーをはいた少年記者タンタンがミルゥ(翻訳ではスノーウィ)と一緒に世界各地をかけ巡る冒険物語。タンタンが訪れる地域は、南アメリカや中国や砂漠地帯といったどちらかというと世界の周辺部にあたる場所。僕自身そういうところが大好きなので、読んでいる時はすっかりタンタンになった気分です。『ファラオの葉巻』はカイロとエジプトの砂漠が舞台。残念ながらまだ行ったことがありません。僕の手元にも突然謎のパピルスが飛んできて……、そんな夢想にふけるおやじがいてもいいですよね。ちなみに、うちの愛犬の名前はミルゥといいます。
エルジェ『ファラオの葉巻』1987年
February 28, 2004
Iva bittova『river of milk』1991年
昨日はクレッツマー関連だったので、今日はチェコ関連で1枚紹介しましょう。イヴァ・ビドヴァは、ロマの父とモラヴィア人の母をもつチェコ生まれのインプロヴァイザー(即興音楽家)。劇団の人気女優であった彼女は、しだいにヴォイス・パフォーマンスやナマの身体表現の世界へ踏み込んでいきました。そして出会ったのが弦楽器。不協和音やピチカートを多用するヴァイオリンやヴィオラの演奏は、ヴォイスと歌がまじりあってなんともいえない音楽空間を作り出します。チェコ民謡、シャンソン、クラシック、ジャズ、ロック、彼女には音楽のジャンル分けなどまったく意味をなしません。とにかく変幻自在。それをたった一人でやってのけてしまうのですから。確か91年だったと思いますが、渋谷のイベントホールで来日公演をやりました。幸運にも直前に友人から知らされて、その即興演奏に立ち会うことができました。ワンピース姿でヴァイオリンを弾く彼女を見て、この人はやっぱり女優さんだと思ったことをよく覚えています。
Iva bittova『river of milk』
Iva bittova『river of milk』
February 27, 2004
Klezmatics『rhythm+jews』1991など
Trabandが来日します。クレッツマーを演奏するチェコのバンド。楽しみにしていたら、なんと友人が関係者で、渋谷エッグマンのコンサート・チケットをいただけることになったのです。さらにうれしいことに、Bondage Fruitなどで活躍する超アヴァンギャルド・ギター奏者鬼怒無月さんのユニットWerehouseとの共演。もう、感激!! 3月5日を指折り数えて待ちましょう。
そもそもクレッツマーとは何かというと、東欧、バルカンに移り住んだユダヤ人が現地の音楽を自分流にアレンジして取り込んだ一種のミクスチャー・ミュージックです。ポルカやワルツをベースにクラリネットやバイオリン、アコーディオンが加わったブラスバンドなのですが、ジプシーやトルコ、アラブの旋律が顔を出したり、なんともボーダレスで楽しい不思議音楽です。それと歌ものにイーディッシュ語が使われていることがポイント。イーディシュ語というのは、古代ドイツ語にディアスポラとしてのユダヤ人のさまざまな文化が入り込んでつくられた言葉。イーディシュ文化は、じつはヨーロッパの歴史の深層部分と深いつながりがあるのです。まぁ、そんなお勉強は専門家にまかせるとして、そのユニークな音楽を楽しみましょう。この2枚は、ボストンとNYで活躍するクレッツマー・バンドのソロアルバム。どちらも、歌ものですが、思わず腰を振りたくなるようなダンス・ミュージックでもあります。
ところで、あるシンポジウム(僕の企画した)で幕間に『rhythm+jews』の一曲をかけたら、パネリストのひとりピーター・バラカンさんが、僕のところにかけよってきて、「これは何?」と激しく反応しました。その後ピーターさんは、自分の番組でクレッツマーをよくかけるようになりましたが、それは僕のコンパイルの影響なんですよっと、ちょっと自慢。
Klezmatics『rhythm+jews』1991
The Klezmer Conservatory Band『Old World Beat』1991
そもそもクレッツマーとは何かというと、東欧、バルカンに移り住んだユダヤ人が現地の音楽を自分流にアレンジして取り込んだ一種のミクスチャー・ミュージックです。ポルカやワルツをベースにクラリネットやバイオリン、アコーディオンが加わったブラスバンドなのですが、ジプシーやトルコ、アラブの旋律が顔を出したり、なんともボーダレスで楽しい不思議音楽です。それと歌ものにイーディッシュ語が使われていることがポイント。イーディシュ語というのは、古代ドイツ語にディアスポラとしてのユダヤ人のさまざまな文化が入り込んでつくられた言葉。イーディシュ文化は、じつはヨーロッパの歴史の深層部分と深いつながりがあるのです。まぁ、そんなお勉強は専門家にまかせるとして、そのユニークな音楽を楽しみましょう。この2枚は、ボストンとNYで活躍するクレッツマー・バンドのソロアルバム。どちらも、歌ものですが、思わず腰を振りたくなるようなダンス・ミュージックでもあります。
ところで、あるシンポジウム(僕の企画した)で幕間に『rhythm+jews』の一曲をかけたら、パネリストのひとりピーター・バラカンさんが、僕のところにかけよってきて、「これは何?」と激しく反応しました。その後ピーターさんは、自分の番組でクレッツマーをよくかけるようになりましたが、それは僕のコンパイルの影響なんですよっと、ちょっと自慢。
Klezmatics『rhythm+jews』1991
The Klezmer Conservatory Band『Old World Beat』1991
February 26, 2004
福本義裕『殺人者の科学』作品社 1987
「「殺し」は生体機械が生存する上での重要な技術である」という認識に基づいて、「殴る」「締める」「切る」「射つ」「盛る」「仕掛ける」…、と人間の戦闘行動の進化に沿って分類し、懇切丁寧に[殺し方」のいろはを図解したユニークかつアブない本。じつは著者から謹呈していただいたものなんです。というのも、著者の福本さんとは、松濤の秘密結社k舎在籍時代の友人。わずか1年足らずでk舎を脱藩した彼は、当時ビニ本といわれたエロ雑誌の業界でエディター&ライターとして頭角を現し、気がつくとこんな本をつくる偉〜い(?)人になっていたのでした。「対人戦闘行為の系統図」とか「武器進化の系統図」とかやたらとチャートが多いのは、もしかしてブックデザインを担当した戸田ツトムさんのアイデアでは。シルバーメタリックと黒ベタの多用は明らかに武器のメタファーですが、今、こういうことをやったら完全にウキますね。やはり、その意味で内容もさることながら、デザインも80年代だからこそできた本なのかもしれません。ちなみに、現在エロマンガ、オタク評論で大活躍の永山薫さんが、福本義裕さんその人です。
福本義裕『殺人者の科学』作品社 1987
福本義裕『殺人者の科学』作品社 1987
February 25, 2004
『Fine time A TRIBUTE TO new weve』2004
本日発売! できたてホヤホヤのトリビュート・アルバムです。といっても、昨日タワーにいち早く並んでいたのを目ざとく発見、すぐにゲットしてしまいました。以前紹介したように、本作は小野島大さんが企画・監修されたニュー・ウェイヴの2枚組カヴァー・アルバム。17組の日本人アーティストが、思い々のアプローチでニューウェイヴの楽曲に挑戦しています。とりあえず気にいったのはROVOの「We are time(Pop Group)」と岡村靖幸の「Burning down the house(Talking Heads)」とRosaliosの「Papa's got a brand new pig bag(Pig Bag)」。とくにROVOはディスク2の最後を飾るものでこのトランシーな演奏がエンドレスだったらどんなにいいだろうかと思うほどカッコイイ。いずれも、ファンクモードがギンギン。僕ってよっぽどファンクが好きみたいです。1曲1曲アナログ版と聞き比べてみたのですが(たまたま何枚かもっていたので)、オリジナルの方もまったく色あせていなかった。やっぱ、ニュー・ウェイヴ・ルネサンス間違いなしですよ!
『Fine time A TRIBUTE TO new weve』2004
『Fine time A TRIBUTE TO new weve』2004
February 19, 2004
デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン『Structure et Force』2003
「構造と力」、えっ本気っスか!? AAとともにニューアカを生きた人間にとっては、一瞬眼を疑いました。だって言わずとしれたAAのデビュー作と同じタイトルなのですから。しかし、そこはリーダーの菊池成孔。みごとに、そんなおやじの思い入れを軽く吹っ飛ばしてくれました。オリジナルアルバム1枚目の1曲目から開始された、ファンク+ポリリズムの戦闘は、2枚目にあたる今回のアルバムでも、いかんなく発揮されています。まさしく、力強いうねりとなって構造を作り出し、さらには、脱-構造化へと構造そのものを解体させていくのです。総勢14人がおのおの別のリズムで演奏し、なおかつフロアを踊らせてしまう。そんなことがどうして可能なのでしょうか。ニューアカにとって両義的な存在であったラカン。そのラカン派の精神科医十川幸司さんならその秘密を教えてくれるかもしれません。なぜかってそれは……ねえ。
ところで、菊池成孔さんの本『スペインの宇宙食』は、去年下半期のベスト5に入る傑作。この人、ほんとに天才です。
デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン『Structure』
ところで、菊池成孔さんの本『スペインの宇宙食』は、去年下半期のベスト5に入る傑作。この人、ほんとに天才です。
デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン『Structure』
February 15, 2004
岡田史子『ガラス玉』サンコミックス 1976年
表現主義(エクスプレッショニズム)マンガというものがあるとすれば、その先駆者はまちがいなく岡田史子嬢だと思っています。意味のないコマは一つもない。岡田さんの作品を評してある評論家はこう言いました。『COM』誌上に発表された作品はどれも、シンボリズムとリリシズムの塊。まんが表現の中に、意味をどれだけ詰め込めるか、そんなことを競っているんじゃないかと思ってしまうほど、作品には「意味」が溢れていました。ある時は「カリガリ博士」、ある時はカフカの「城」。岡田さんは、まんがで純文学(なつかしい!)とアートの両方をやり遂げたのです。
この作品集は買ってしばらくして売ってしまいました。どうしてそんなことをしたのかよくわかりません。とても後悔しました。後悔しつづけること20年、ようやく昨年web系の古本屋で買い戻すことができました。定価の10倍の値段がついていましたけどね。
ちなみに、一番好きな作品は、「ピグマリオン」。赤松愛(なつかしい!)似のアランを僕は密かに愛しています、今でも。
岡田史子『ガラス玉』サンコミックス 1976年
この作品集は買ってしばらくして売ってしまいました。どうしてそんなことをしたのかよくわかりません。とても後悔しました。後悔しつづけること20年、ようやく昨年web系の古本屋で買い戻すことができました。定価の10倍の値段がついていましたけどね。
ちなみに、一番好きな作品は、「ピグマリオン」。赤松愛(なつかしい!)似のアランを僕は密かに愛しています、今でも。
岡田史子『ガラス玉』サンコミックス 1976年
February 09, 2004
Audio Active『Spaced Dolls』2000年
ダブはジャンルなのでしょうか。それとも、スタイルなのでしょうか。Audio Activeの演奏を聴いていると、これのどこがレゲエなんだって思っちゃいます。そう、ぜんぜんレゲエじゃありません。だって、最初は10人編成のスカ・バンドだったんですから。ゲェー、それホントっすか? ほんとなんですね、これが。じつは僕も最近知ったんです、『マガジン』で。だからなのかは知りませんが、ファンクでニューウェーブでハウスでテクノでプログレで、いろんな要素が渾然一体となっているのが、なんといってもAudio Activeの魅力。それを最終的にギュッとダビーにまとめあげちゃう。今年もFUJI ROCKのRed Marqueeでお待ちしていま〜す!!
Audio Active『Spaced Dolls』2000年
Audio Active『Spaced Dolls』2000年
February 07, 2004
赤瀬川源平『追放された野次馬』現代評論社 1972年
泰平小僧と馬オジサンによる対談「思想的変質者はいかにして鍛えられたか」という第1章からはじまるこの一冊は、雑誌『ガロ』(もちろん初代の)に仕掛けられた『桜画報』、雑誌『現代の眼』(とっくに廃刊)に仕掛けられた『現代○○考』のコンピレート版。雑誌の一部を乗っ取るというペーパージャックという戦術をあからさまにやってのけたこの二つの劇画連載は、当時の活字メディアを震撼させました。千円札裁判が「虚実皮膜」の表現世界を暴露したとすれば、この二つの劇画は、印刷メディアの「虚々実々」を暴露どころか木っ端みじんに爆破してしまいました。
ところで、今ネット系の古書店でいくらになっているのかとのぞいてみたら、あっと驚く1万円がついていました。じつは『桜画報』も持ってるんですが、こっちはなんと1万5千円! ちなみに、どっちも僕のは新品同様でっせ。
赤瀬川源平『追放された野次馬』現代評論社 1972年
ところで、今ネット系の古書店でいくらになっているのかとのぞいてみたら、あっと驚く1万円がついていました。じつは『桜画報』も持ってるんですが、こっちはなんと1万5千円! ちなみに、どっちも僕のは新品同様でっせ。
赤瀬川源平『追放された野次馬』現代評論社 1972年
February 06, 2004
Orchestra Luna『Orchestra Luna』1974
アートスクールポップシリーズの第3弾として2000年に再発された1枚を、たまたま入ったTSUTAYAで見つけた時には、ほんと狂喜乱舞でした。まさか、こんなのがCDで聞けるなんて思ってもいませんでしたから。TSUTAYAなんて2年に一回も入らないのに、それも百合ヶ丘店。神様のおぼしめしでしょうかねえ。僕がこれを始めてLPで聞いたのは、発売された74年。ミュージカルでシアトリカルで、にもかかわらずアヴァンギャルドなポップサウンドのバンド。そんなのができたらいいよねと友だちの女の子と画策していた時でした。まさに、目指していた音があったんですよ。それが何を隠そうオーケストラ・ルナだったわけです。夢中で聞きまくりましたね。結局たった1枚を残してオーケストラ・ルナは自然消滅。まるで、このジャケットの写真のように、砂漠の蜃気楼のごとく消えてしまいました。
Orchestra Luna『Orchestra Luna』1974
Orchestra Luna『Orchestra Luna』1974