May 2004

May 29, 2004

『PRESS 東京おとなクラブ増刊』東京おとなクラブ 1984

中森明夫さんが編集していた『東京おとなクラブ』の増刊号。ページを開くと、ババーンといきなりこんな見出しが飛びだしてきます。「浅田彰、フライングパイレーツに乗る」。「アッキラくん、あそびましょ」という感じで始まるこの記事、要するに、アッキラくんこと浅田彰さんを豊島園に誘い出して、フライングパイレーツにのっけてインタビューするという企画なんですね。アッキラくんはジェットコースターは高度資本主義的だけれど、フライングパイレーツは封建主義的な遊びでつまらないです、なんてちゃんとそれらしいコメントを述べてお茶を濁してますし、ほんとこの時代の気分がよ〜くあらわれています。しかも、ソフトクリームをなめているアッキラくんのスナップ写真付き。でも、この雑誌の白眉はなんといっても戸川純さんの特集。ちょうど「玉姫様」が発売されて、新人類世代(死語の死語)のハートをがっちり掴んで、ノリノリ(死語の死語のさらに死語)の頃でしたから、その記事が目に入って思わず買ってしまったんでしょう。中森さんのインタビューがじつに気が利いていて面白いのですが、新宿の母票原すみ子(ママ)が戸川純さんの手形を見て将来を占うというコラムがあったりカットは丸尾末広だったりと、編集もいいとこ狙ってます。(注…票原すみ子は栗原すみ子の誤植か、それともウソ?)ほかには、今は和光大学の先生になってしまった野々村文宏さんや朝日新聞で書評もやってる山崎浩一さんなどが寄稿。執筆陣はなかなかゴーカですが、なんと岡崎きょうこ(ママ)が8コマまんがを描いているというのは特筆ものですね。
というわけで、『裏玉姫 戸川純とヤプーズ』カセットテープ版(YEN/アルファレコード)も一緒に紹介しましょう。84年2月19日ラフォーレミュージアム原宿でのライブを収録したもの。この「玉姫様」は最高にいいですよ。
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『裏玉姫 戸川純とヤプーズ』カセットテープ版(YEN/アルファレコード)
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May 28, 2004

『山口昌男山脈』no.4  国書刊行会 2004

山口昌男先生にお会いしました。じつに17年ぶりです。前にお会いした時は、丸一日東京を移動しつつのインタビューでした。新宿で待ちあわせて、市ケ谷へ移動し、○万円の講演会をタダで聴講し、再び地下鉄を乗り継いで渋谷へ。センター街の鰻屋で大ジョッキのお代わりをした時には、すでに日はとっぷりと暮れていましたっけ。挨拶代わりに、その話をしたのですが、先生はすっかり忘れておられました。ご病気をされてからは、訪ねてくるものは誰構わず「知の迷宮巡り」に引っ張り出すということはさすがになくなったようですが、「血(知)の巡り」のよさはあいかわらずです。楽しい時間を過ごさせていただきました。帰りがけに『山口昌男山脈』の話をしましたら、奥さんが最新号が出たのよと一冊持ってきてくれました。これは『内田魯庵山脈』にならった山口先生の個人誌です。そういうつもりで言ったわけではなかったのですが、ちゃっかり頂戴しちゃいました。
『山口昌男山脈』で思い出したのですが、no.1に収録されている「寺山修司の挑発力」という鼎談で、その昔『地下演劇』という雑誌で山口先生が芥正彦さんと対談をしたと話しています。この芥さんという人は、じつはとんでもない怪人で、ある時座談会に参加するのですが、終始他の参加者の話を無視して一人でずっとしゃべり続けていたというのです。編集をした榎本了壱さんが困ってしまい、結局ページを上下に分けて上段で座談会、下段で芥さんのモノローグという二元放送でまとめたと。なるほど、そういう手があったのか。僕も時々とんでもない座談会をまとめることになって、煩悶することがあるのですが、今度からこの手を使おうと思いました。
さて、右がその『地下演劇』。このno.4、ついに丸ごと一冊芥正彦さんのモノローグでつくってしまった問題作。640ページという分厚さに文字数が100万字以上(あんまりびっしり入っているので数えられません)入っています。芥さんの雑誌じゃないのに(寺山さんの雑誌)、芥さんの個人誌にしちゃったわけです。なるほどこんな手もあったのか。今で言えば芥正彦造山運動!!

『山口昌男山脈』no.4  国書刊行会 2004
『地下演劇no.4 ホモフィクタス』地下演劇社 1971

山口昌男
ホモフィクタス
山口昌男山脈〈No.4〉

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May 12, 2004

『畠山直哉 NAOYA HATAKEYAMA』淡交社 2002

都市に内包された自然に内包された都市に内包された自然=都市(自然(都市(自然))) このウロボロス的な都市と自然の入れ子状況を、シャープにかつクールな視線で捕獲し続けているフォトグラファーが畠山直哉さんです。はじめて「等高線」の牛の写真を見た時に、「こりゃ、TADAO ANDOの牛じゃあ!!」と思わず声を上げて笑ってしまいました。そこに佇む牛の肌理がコンクリート打ちっぱなしのようで、まるでビルディングのようだったからです。それ以来、畠山直哉さんの仕事は常に僕を驚かせます。「ライム・ワークス」の工場はラップランドの森のようですし、「ライム・ヒルズ」の採石場は、2025年の品川駅のようです。「アンダーグラウンド」の下水道は、ニューロンのようですし、「スローグラス」は、クオンタムジャンプのようです。畠山さんの手にかかると、自然は人工物に、人工物は自然に、レンズを透過したとたんに、世界が逆立ちしてしまうのです。自ら暗箱そのものとして生き直している畠山さんと、幸運にも一度海外に行ったことがあります。ドイツの「エムシャーパーク」プロジェクトの取材でした。すでに閉山してから何十年もたった大規模工場地帯を、産業的自然風景として再生保存しようというそのプロジェクトを、撮影できるのは畠山さんをおいていないと思ったからです。そして、予感はズバリ的中。彼のカメラは、みごとに錆びた鋼鉄が植物に変成し繁茂する21世紀の都市の近未来を写し取ったのでした。「インダストリアル・ネイチャー」というタイトルで、『City&Life』という雑誌に発表しました。右はその記事。ツォルフェアアイン第12立坑公園事業のシンボル的存在「採炭施設」。左は2002年、郷里の岩手県で開催された回顧展に合わせて編まれた写真集。
ちなみに畠山直哉さんは1997年に第22回木村伊兵衛賞を受賞。

畠山直哉
エッセン
畠山直哉

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May 05, 2004

ROVO『Tonic2001』2002年

今年も行ってきました「MAN DRIVE TRANCE SPECIAL vol.2」。5月5日日比谷野音、つまり今日です。日本中が晴天なのに、関東のみ雨という予報。お願い降らないで!とつくったてるてる坊主が55個、みごとお役目を果たしてくれました。ゲストの一組バッファロー・ドーターの演奏の時にちょっと小雨がぱらついたくらい。あとは雨量0で、持っていったカッパの出番はわずか5分5秒。寒かったのはしかたないとしても、とにかく濡れ鼠で踊ることにはならなかったのですから上出来でしょう。
エマーソン北村もGAMA(木管楽器ディジュリドゥと打ち込みを一人でこなすトライブ系、はじめて見たけどすごかった)もよかったけれど、やはりなんといってもROVO。今日は、最初から新曲ですっ飛ばしました。途中、あれっ、いつからラウンジ系に?! なんてのもあって、ちょっと驚かされたり。でも、ハイテンションな演奏はあいかわらずです。後半戦に入るといつもと同じ調子。もう僕らの足腰は止まってられません。気がつくと完全に踊り狂っていました。本当は今日は満月で、それを想定してのライティング。残念ながら、月は雲の隙間からも覗いてくれませんでしたが、満足のいくパフォーマンスでした。さて、「日比谷野音ライブ」はすでに紹介ずみ。そこで、今回はNYでのライブ版にしました。ROVOのライブはどれも甲乙つけがたいいいものばかり。でも、僕はこのNYのがけっこう気に入ってます。なんか、音の空気が違うんですね。それに、なぜかすごく自由奔放に演奏しているんですよ。
Tonic
ROVO『Tonic2001』2002年
Tonic 2001

cauliflower at 00:21|PermalinkComments(0)TrackBack(0) クラブミュージック 

May 04, 2004

菊池成孔『Degustation A Jazz』 2004年

料理界を喫驚させたスペインの天才シェフ、フェラン・アドリア・アコスタさんが先月末に来日し、その仰天テクニックを余すところなく披露されました。あいにくチケットは満員御礼のために入手できず。しかたなく、そのデモンストレーションの様子は後日、料理研究科・海豪うるるさんのレポートから知ることになりました。例の「エアー」と名付けられた泡の料理を、今回は「抹茶のエアー」と称してエビに添えられたそうです。また、おなじみの注射器を使用してつくる「偽キャビア」。メロンのピューレをキャビアの間に詰め、パッションフルーツのソースをかけて出来あがり。そんな、フェラン・アドリアのアイデアと機知に溢れたびっくり料理が、これでもかこれでもかと本人の実技付きで紹介されたのだそうです。あ〜ほんとうに残念。もうこうなったら、カタルニアの彼のレストラン「エル・ブリ」に行くっきゃないですね。そして、その味に心底翻弄されましょうか。
さて、フェラン・アドリアさんを一躍世界一有名な料理人にしたのが、「デギュスタシオン」でした。彼は、それまで誰も試みたことのない料理(のプレゼンテーション)を食卓上に展開したのです。なんと一口大の料理、62皿で完結するコースをお客さんに提供するというもの。厨房の中に客席を設けるとか、50席しかないのに55人もスタッフがいるとか話題には事欠かない「エル・ブリ」ですが、さすがにこの新趣向のフレンチに世間は度肝を抜かれました。
で、菊池成孔さんの新譜。成ちゃんはあえてジャズアルパムをつくるにあたって、このフェラン・アドリアのアイデアをちゃっかり拝借したのでした。モダンにフリーにクラブ系……、さまざまなスタイルの作品が全部で41曲。一口大の曲ばかりなので、どれもちょっと喰い足りない感じ。でも、その残り香を堪能するまもなく、次の味(音)が誘惑します。まさにそれは、あの「エル・ブリ」の試食(デギュスタシオン)的コースそのものといえましょう。そこでお願い。今度は成ちゃんの考えるスウィーツを食べさせてくださいまし。もちろん、ラス・メイヤーばりの「食紅てんこ盛り」ではないものですよ。
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菊池成孔『Degustation A Jazz』 2004年
Degustation a Jazz
Chansons extraites(de Degustation a Jazz)

cauliflower at 17:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0) ジャズ