June 2004

June 28, 2004

John Zorn 『John Zorn 50th Birthday Celebration vol.3 Locus Solus』2004

2003年9月ジョン・ゾーンの生誕50年を祝って、30日間のマラソン・ライブが開催されました。場所は、NYのロワー・イースト・サイドにある「トニック」。過去にROVOがここで演奏し、ライブアルバムをつくったことは、以前紹介しました。
さて、ジョン・ゾーンのレーベル「Tzadik」から、「Birthday Celebration」としてこの時のライブ音源が随時リリースされることになったのです。これはその第3弾。ジョン・ゾーン(as)、アート・リンゼイ(g)、アントン・フィア(ds)によるユニット「ロクス・ソルス」のじつに20年ぶりの新譜です。アントン・フィアがたたき出すビートに、ジョン・ゾーンのフリーキーなアルトサックスが激しく亀裂を入れ、さらにアート・リンゼイの爆裂ケイレンギターがそれらをボコボコにするという、破壊と創造、戦慄と緊迫の44分53秒。それはそれはすさまじい演奏です。気になったのは、曲が終わると、必ず高笑いが聞こえてくるんですが、あれはジョン・ゾーンなのでしょうか。無気味すぎます。
Locus Solus
Locus Solus: 50th Birthday Celebration

cauliflower at 00:35|PermalinkComments(0)TrackBack(0) ロック 

June 27, 2004

長尾智子『長尾食堂』マガジンハウス 1999年

黒パンにたっぷり塗られたバター。でも、よく見ると焦げ茶色の粒々が混ぜ込んであるのです。さっそく、一口いただいてみると、おやっ、何やら懐かしい味が……。「ふふふっ、それ、黒砂糖、美味いでしょ?」 いや、とっても美味しいっす。寒い国でできる乳製品と暑い国でできる砂糖のマリアージュ。その不思議な風味は、奇想天外かつ絶妙です。
長尾智子さんの料理は、いつもこんな風に唐突に登場します。そして、いつのまにかみんな長尾ワールドでほっぺたが緩みっぱなしになってしまうのです。今日は、ひさしぶりに長尾智子さん宅にお邪魔しての撮影でした。黒砂糖バターは、撮影の合間さっとつくったいわば賄い料理。本ちゃんはもっとすごいアイデア料理ですが、残念ながら企業秘密で紹介できません。あしからず。
長尾さんの料理は、モダニズムの建築のようにシンプルでしかも驚くべきアイデアが隠し込まれています。男性に熱烈なファンが多いのも頷けますね。そんな長尾智子の世界観が、世に知れ渡るきっかけとなったのがこの一冊。ごま、さくらえびなどの乾物、じゃこ、水菜といった長尾さんの偏愛する食材は、すでにここでもバンバン使われています。ちなみに、僕は「たけのこと豆腐のじゃこピリ辛焼き」に「さくらえびのまぜごはん」をつくって家族に好評でした。
長尾食堂
長尾食堂

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June 13, 2004

大浦みずき『バック・ステージDIARY』小学館 2002年 他

イラストレーターの阿部マリー(真理子)さんに誘われて、大浦みずきさんの舞台生活30周年記念「dream by dream」を見てきました。大浦みずきさんを初めて見たのは83年の宝塚花組公演「メイフラワー」。同じ年にバウシアターでやった「アンダーライン」という小さな作品も見ました。探偵レナード・バレル役があまりにカッコよく、気がつけばムラ(宝塚大劇場)にまで足しげく通うようなファンになっていたのです。彼女の本名はなつめさん。虜になった僕は、なつめにちなんだペンネームまでつくってしまいました(「仁王立ち倶楽部」になつめひろみ名義でダンス批評を連載していたのは、私で〜す)。
さて、公演はというと、まずしょっぱなから宝塚時代のメドレー。なつめファンには号泣ものの憎い企画です。得意のタンゴはさらに磨きがかかりやはりダンスはこの人しかいないと妙に納得してみたり。最近の舞台から、特に「レミゼラブル」から二曲を歌い会場を魅了しました。とにかく全編なつめさんの歌と踊りがてんこもり。往年のファンにはたまらない夢の一夜になりました。阿部マリーさんのはからいで楽屋にお邪魔し、僕は握手をさせてもらっちゃいました。もう一生右手は手洗わないぞ。
終演後、阿部さんの友人でいらっしゃるエッセイストの阿川佐和子さんたちも一緒になって、楽しくなつめさんの話をしました。阿川さんは、なんとナッチー(なつめさん)とおんなじ小学校の同級生だったんですって。
というわけで、今日はなつめさんのエッセイとご尊父でいらっしゃる坂田寛夫さんが宝塚の創始者小林一三の生涯を綴った『わが小林一三』を紹介しましょう。一目でおわかりのように、『バック・ステージDIARY』の表紙は阿部マリーさんのイラスト。挿し絵もすべて彼女が担当。とても楽しい日記風のエッセイ集です。酒田寛夫『わが小林一三』(河出書房新社、1983年)の方は、財界人としてはきわめて個性的な存在であった小林一三の、とりわけ少女歌劇という世界に類のない芸能を生みだした心性にスポットを当てた評伝。

バックステージ
わが小林一三

バック・ステージDIARY

わが小林一三―清く正しく美しく

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June 06, 2004

『エピステーメーII 0号』第2期 1984年 朝日出版社 ほか

いったん終刊したのですが、1984年に『エピステーメー』は復刊しました。といっても、4号で再び長い眠りに入るのですが。この第2期というのが、また世の常識を破壊するメガトン級の危険物でした。読者に媚びないおもねない、というか「読めるなら読んで見ろ」と読者を恫喝するエディトリアルデザインでカリスマ的人気を獲得した戸田ツトムさんと鈴木一誌さんも、この第2期の『エピステーメー』の杉浦康平さんからみれば、ひよっこ同然でしょう。杉浦さんは「読めるなら読んで見ろ」とは決して言いません。ただ、「あなたはこれが読めなければいけない」と諭すのです。受苦、パッション、忍従を強いるデザイン。その意味で、『GS』より、第2期『エピステーメー』はよりフランス現代思想的(!)でした。ところで、ここに並んでいる2冊は?、じつは、この三冊とも編集長が同じ人なのです。中野幹隆さん。知る人ぞ知る名編集者。今は、哲学書房の代表でもあります。中野さんの辣腕ぶりは夙に知られていますが、なんといってもすごいのは、現代思想=難解というイメージを紙面にそのまま反映させたことにあります。現代思想なんてホントはあきれるほど分かりやすいものなんですが、中野さんが杉浦さんや鈴木さんにデザインを頼んだばかりに、現代思想が理解不能なものになってしまったのです。現代思想は難しいんじゃなくて、単にデザインがすごすぎて読めない、ただそれだけのことだったんです。今、現代思想離れが深刻です。この凋落ぶり、中野さんのせいだとは言いませんが、もう少し普通の、常識の、当たり前の文字組みで読者に提供してくれていれば、こんな状況にはならなかったと思うんですがねぇ。
左より『エピステーメーII 0号』第2期 1984年 朝日出版社、『季刊パイディア』第11号(AD=杉浦康平) 1972年 竹内書店、『季刊 哲学』創刊準備号 1987年 哲学書房(AD=鈴木一誌)

エピス第2期パイディア
季刊哲学


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June 05, 2004

『エピステーメー』創刊準備号 1975年 朝日出版社

『エピステーメー』は、フランス現代思想オタクのコレクターズアイテムといっていいでしょう。ミッシェル・フーコー/白井健三郎訳「エピステーメーとアルケオロジー」、蓮實重彦「ディスクールの廃虚と分身」の2本の論文が収められた本誌には、次号(創刊号)より始まる連載が奥ゆかしく、しかし自信たっぷりに紹介されています。呉茂一「古典へのチチェローネ」、小尾信爾「進化する宇宙」、氷上英廣「ニーチェの気流圏」、渡辺格「人間の終焉」、グスタフ・ルネ・ホッケ/種村季弘訳「絶望と確信」、荒井献ほか訳「ヘルメス文書」、廣松渉「マルクス・エンゲルスの思想圏」。そして記念すべき創刊号の特集は「記号+レクチュール」。フランス現代思想の専門誌というよりは、大森荘蔵さんがビックバンを起した雑誌として僕の中では長く記憶されることになるのです。『エピステーメー』のもう一つの特徴は、杉浦康平さんのグラフィックデザインがやっぱり大爆発を起したことでしょう。すでにこの準備号からしてすごかったのですから。ご覧のように、全て左側のページにはテキスト、右側には○×△□の有名な女性像が裁ち落としで載り、しかもペラペラまんがのように大から小へ大きさを変えながら、反時計回りに移動していくというものでした。全ページ見せられないのが本当に残念です。古書店で見つけたらぜひぱらぱらとめくってみて下さい。でも、間違ってもこのグラフィックはなんのため? なんて思っちゃダメですよ。

『エピステーメー』創刊準備号 1975 朝日出版社
圧倒的に無意味なページネーションが炸裂します。

エピス創刊
エピス中
エピス中2


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June 04, 2004

moe.『Warts and All volume one』2001年

すでに2度も来日してたなんて。まったくうかつでした。phishと双璧をなすロック系ジャムバンドmoe.。phishが下地をつくり、フジロック02でストリング・チーズ・インシデントが火をつけたジャムバンド・ブーム。今年いよいよmoe.がフジロック04のField of Heavenに登場します。今後ジャムバンドはジャンルを越えたムーブメントになっていくことは間違いないでしよう。その中心的役割を担うはずのバンドこそmoe.だと思います。カントリーやブルーグラス、ジャズにレゲエが溶け込んだミクスチャーミュージックという点では、あまたあるジャムバンドと変わりありませんが、moe.にはサザンロックという図太い芯が一本通っています。それが、ほかのジャムバンドと一線を画すところです。ツインリードギターに独特のうねりのあるサウンド。粘ばりのあるドライブ感は、ちょっぴりオールマンブラザーズバンドを彷彿させます。そういえば、デュアン・オールマンに声色もちょっぴり似ていたりして。『Warts and All volume one』は、2001年4月23日にペンシルバニア州スクラントン・カルチャー・センターでのライブ録音。3枚組。ラストにラモーンズの「I wanna be sedated」をやっていますが、これってシャレなの? ところで、Warts and Allとは直訳すると「イボまで見せます」。つまり、「何から何までご開陳!!」という意味だそうです。
moe.
moe.『Warts and All volume one』2001年

Warts and All, Vol. 1

cauliflower at 23:50|PermalinkComments(0)TrackBack(0) ジャムバンド