September 20, 2004
ジル・ラプラージュ『赤道地帯』弘文堂 1988
クラウス・キンスキー扮する主人公の夢は南米にオペラハウスを建設することでした。そのための資金を捻出するために、山奥を開拓しゴム園をつくろうと決断。そして、そこに流れる河に輸送船を運航させるために船で山を越えることを思いつく。この奇想天外な物語「フィツカラルド」(ヘルツォーク監督)は、じつはもとネタがあるらしい。そんなうわさを聞きつけて、いてもたってもいられなくなり、僕はマナウスへと旅立ったのでした。マナウスは、アマゾン川の河口から1700km上流に位置する都市。ほんとうにそんな劇場があるのかと半信半疑で歩いていたら、突然目に飛び込んできた鮮やかなタイル張りのドーム。そう、それがアマゾネス劇場です。うわさは本当でした。19世紀末に始まるゴム景気で、20世紀の初頭には、多くの成り金を産みました。ゴムで稼いだ巨万の富を消費するために、ジャングルの真ん中にパリのオペラ座を模したオペラの劇場をつくって、ヨーロッパと同じオペラを上演する。そんな夢みたいなことを成り金たちは実行してしまったのです。写真がそのアマゾネス劇場の外観。内部がまたすごい。贅を尽くした調度品が所狭しと並んでいます。アマゾンの伝説をモチーフにした黄金の刺繍のある緞帳、きらびやかな巨大なシャンデリア、さらには金銀がふんだんに埋め込まれたインテリア……。誰でも眩暈を起こさずにはいられません。アマゾネス劇場はかつての栄華を伝える、夢の箱船なのかもしれません。
『赤道地帯』のどこにも、アマゾネス劇場の記述はありません。しかし、「アマゾニア」と題する小品が、僕にマナウス行きを決意させたことは確かです。そこに描かれているアマゾンの森林は、著者の思いとは裏腹に、成り金たちが幻想したオペラの書割りのように僕には見えたからです。ジャングにしまい込まれた黄金の劇場。そんなフィクション、誰だって見たくなりますよ。
赤道地帯
『赤道地帯』のどこにも、アマゾネス劇場の記述はありません。しかし、「アマゾニア」と題する小品が、僕にマナウス行きを決意させたことは確かです。そこに描かれているアマゾンの森林は、著者の思いとは裏腹に、成り金たちが幻想したオペラの書割りのように僕には見えたからです。ジャングにしまい込まれた黄金の劇場。そんなフィクション、誰だって見たくなりますよ。
赤道地帯
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